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いる。これらの写真より求めた速度分布をFig.11に示す。この分布はFig.11中の黒い点で示されており、ポンプ通過回数が増すと人工海水の速度分布に近づいていっていることが分かる。しかし、壁近くの情報が不十分である。これはPEO添加により表面張力が約12%小さくなり動粘度が約20%大きくなるために電極線から気泡が離脱しにくくなり壁近くでの可視化が困難になってきていることによる。
そこで、注入トレーサ法により可視化して単位時間当たりのトレーサの軌跡長より求めた円管内層流の速度分布をFig.11に示す。この分布はFig.11中の白抜きの点であるが、PEO添加により鋭くなった放物型の速度分布がポンプによる攪拌により次第にPEOを添加していない人工海水の速度分布に近づいていっている。また、壁近くではいずれの場合にもほぼ同じ速度勾配を示しており、層流域では壁面せん断応力が同じ、即ち管摩擦係数が同じになっており、PEO添加とその攪拌による影響がほとんどないという3-1節の結果が裏付けられる。なお、Fig.11で完全にHaen-Poiseulliの式に従っていないのは、擬塑性流体におけるべき乗則でのそれぞれの溶液の構造粘度指数の違いによるものなのか、層流の場合にPEO添加による非ニュートン性が中心付近で強く現れるのかあるいはトレーサが大きく流れに十分追従していっていないことによるのか等の理由が考えられるが、このことについては更に検討が必要である。

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3-4 円管内乱流の可視化
水素気泡法では乱流域での可視化が困難であるのでトレーサ法で可視化し、ビデオ撮影した画像をコンピュータに取り込み解析して求めた円管内乱流の時間平均速度分布とレイノルズ応力の分布をFig.12とFig.13に示す。Fig.12中の各直線は壁面でのレイノルズ応力を0と仮定した場合の壁面せん断応力と圧力差との釣り合いの式より求めた壁面での速度勾配である。トレーサ法で求めた時間平均速度分布はPEOを添加した場合の速度分布からポンプ通過回数が増すにつれてPEOを添加していない場合の速度分布に近づいていく。また、トレーサ法で求めた壁面での速度勾配は壁面せん断応力と圧力差の釣り合いより求めた速度勾配と良好に一致している。
PEOを添加すると速度変動成分が抑制され層流状態に近づいていき、特にFig.13に示すようにレイノルズ応力は著しく減少する。また、PEO添加はニュートン流体の円管内乱流で生じる管壁から約0.2半径の位置での最大レイノルズ応力を大幅に低下させる。PEO添加による管摩擦低減効果はこのような速度変動成分の抑制に起因し、ポンプによる管摩擦低減効果の機械的劣化は直鎖状のPEO高分子が攪拌により切断されて分子量が小さくなることによるものと考えられる。

 

 

 

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